株券の保管(保護預かり制度と保管振替制度)

ネット証券による株式取引が発展した今、我々は株の売買を当たり前に行っていますが、実際に株を所持していると確認できるのは画面上のみである方が大半であると思います。

株券の電子化が行われている現在、我々の所持している株はどのような扱いを受けているのでしょうか?

■かつては「株券」の保管方法はかつては3つ

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株の取引きを行うということは、企業の株主としての権利を売買していることを意味しています。そして、その株主としての権利を持っていることは「株券」を持っているかどうかでかつては証明されました。

株券とは、株を発行した企業の企業名や、代表取締役の署名、株数、株券の番号などが記載されたものです。株券は印刷された実物のものだったので、どこかに保管しておく必要がありました。

その保管の仕方には、(1)証券会社で保管、(2)(ほふり)で保管、(3)株主が自分の手元で保管という3つの方法がありました。

■「株券」には紛失や盗難、詐欺といった問題がつきもの

しかし、株主が手元に株券を置いていると紛失をしてしまったり、盗難や偽造された株券を買わされてしまうといった犯罪に巻き込まれるケースも少なくはありませんでした。

他にも、企業が代表取締役が変わるたびや、売買単位を変更するたびに株券に記載されている内容を変更するために、株券をその企業に提出し、新たな株券を受け取るといった手続きを取る必要があり、株券の保管にはコストがかかるものでした。

■2009年からは「株券」は電子化へ

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そうした問題の解決を目的の一つとして、2009年に上場している全ての企業の株券が電子化(ペーパーレス化)されました。

2009年以降は実物の「株券」は全て廃止され、証券保管振替機構(ほふり)や証券会社などの金融機関に開かれた口座を通じて、電子的に株主の権利の管理や株式の売買を行うようになっています。

この電子的なやり取りは投資家がなんの手続きをする必要もなく、自動的にほふりや金融機関が実行してくれます。

そのため、紙で印刷された「株券」が存在していた時のような紛失や盗難、詐欺といった問題から投資家は解放され、投資家は今では株券の存在についてほとんど意識する必要なく株の売買をすることができるようになっています。

■株券の保管はどのように行われているのか?

私たちが売買を行った株券はどのような処理が行われているのでしょうか?

多くの場合、その株式は私たちの手元に実際に渡ってくるのではなく、証券会社が代わりにそれを委託する「保護預かり制度」というシステムがとられています。

私たちが保持している株は証券会社を通じ、「証券保管振替機構」(ほふり)というところに保管され管理されます。これはどこの証券会社によっても同様です。

そこで株主名義は一度「ほふり」で登録されますが、会社に対する株主の権利は当然投資家に帰属します。

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■「保管振替制度」による株券のペーパーレス化

上に挙げた、証券保管振替機構が一連の株券の記帳の流れを行うことを「保管振替制度」と呼びますが、この制度により2009年には全ての上場企業の株券が電子化(ペーパーレス化)するようになりました。

株券が紙だった時代には、それを自らで保管する「タンス保管」が行われていましたが、電子化により紙の株券を所持することはほぼ意味を持たなくなりました。

自分で株券を保管していた際には紛失や盗難などの心配があったり、移管が面倒だったりというデメリットがありましたが、電子化によりそういった欠点はほぼ無くなったと言えるでしょう。1117

■未上場企業の株式の扱いはどうなるのか

2009年より上場企業の株式は全てが電子化されましたが、未上場企業の株はどのように扱われるのでしょうか?

未上場企業の場合、株式会社であっても株券を発行せずともよい「株券不発効制度」というものが導入されています。

そもそも規模が小さい会社の場合は株の発行を行うこともそこまで多くなく、株主名簿に株主保有者の名前が載っていることが株式の所有を意味する場合が殆どです。

2015年より未上場企業に対する投資を行うことが解禁されたものの、そういったものを騙った事件もあっただけに、その地盤は整備中と言うことが出来るでしょう。

未上場企業の株券を扱うのはベンチャーキャピタルが大半を占めていたわけですが、クラウドファンディング制度の発展により、個人投資家であってもそういった企業に資金提供を行える場は増加しつつあると言えます。

■株主が上場株式を担保として金融機関から融資を受けるとき

従来、株主が上場株式を担保として金融機関から融資を受けるときには、質権者である金融機関に対し、質権設定者として所有する株券を引き渡す略式質が主流でした。

しかし、株券の電子化により、証券会社等金融機関の口座間の振り替えによって質権設定する方式に変わりました。

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普段株取引をするうえではあまり意識しませんが、株券が電子化(ペーパーレス化)され、私たちの株取引はスムーズになったと言うことが出来るでしょう。

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