■食い合いとは
食い合いとは、信用取引で「信用買いの残高」と「信用売り(空売り)の残高」の重複している部分のことを指し、「取組み」ともいわれます。
例えば、ある銘柄に対して、信用買いが1万株あり、信用売りが1万5000株ある場合、1万株分が信用買いと売りで重なっているため、1万株が食い合いということになります。
■信用買いと信用売りの残高の意味
ある銘柄に対して、「信用買いが増える」ということは「将来、株価が上昇することを予測している人が増えている」ことを意味し、逆に「信用買いが減る」ということは「将来、株価が上昇することを予測している人が減っている」ことを意味しています。
また、「信用売り(空売り)が増える」ということは、「将来株価が下落すると予測している人が増えている」ことを意味しており、逆に「信用売りが減少している」ということは「将来、株価が下落していることを予測している人が減っている」ことを意味しています。
これらのことを合わせて考えると、次のことが推測することができます。
第一に、信用買いと信用売りが共に減少、もしくは増加している場合には、株価の方向感に乏しく株価の今後の動向について予測しにくいということです。
例えば、信用売りと信用買いが共に増加している場合、信用買いが増加しているということは株価が上昇することを予測している人が増加していることを意味しているにもかかわらず、信用売りも増加しているため株価が下落すると予測している人も増加していることになります。
そのため、どちらの勢力が今後強くなるかについて予測しにくく、株価の動向も読みにくくなります。
それに対して、信用買いが増加し、かつ信用売りが減少している場合、株価の上昇を予測している人が増加しており、かつ下落を予測している人自体も減少していることになります。
そのため、投資家の大多数がこの銘柄に対してポジティブな印象を持っていることが読み取れます。この場合、食い合い以外の信用売りが減少していくか、もしくは信用買いの残高が増加していくことになります。
また、信用買いが減少し、かつ信用売りが増加している場合、株価の上昇を予測している人が減少し、かつ株価の下落を予測している人が増加していることになります。
そのため、投資家の大多数がこの銘柄に対してネガティブな印象を持っていることを読み取ることができます。この場合、食い合い以外の信用買い部分が減少するか、もしくは信用売りの残高が次第に増加していくことになります。
このように、食い合いの様子を見ながら、信用買いだけが増加しているのか、信用売りだけが増加しているのか、もしくは売りと買いの残高が同じ方向に動いているのかなどを考えることは、株価の動向を予測する上で参考になります。
■制度信用取引は半年で決済をする必要があることに注意
制度信用取引は半年以内に決済を行う必要があります。制度信用買いが大量にあるという状況は別の見方をすれば、半年以内に売りが大量に行われる可能性があるということも意味してます。
短期的な成長が見込まれ、制度信用買いが増えている場合には短期的には株価の上昇圧力となりますが、成長鈍化の予測が立ち始めたり、業績の下方修正などのネガティブな材料が出始めたりすると、それまで制度信用で買っていた投資家が一斉に売りはじめ、株価が急落ケースもあります。
また、逆に、制度信用売りが大量にあるという状況もまた別の見方をすれば、半年以内に大量の買いが行われる可能性が高いことを意味しています。
そのため、業績悪化によって大量の信用売りが発生していた企業の黒字転換のニュースや、業務提携、魅力的な新商品の発表などのポジティブな材料が出始めると、制度信用売りを行っていた投資家が今度は一気に買い戻しを行い、踏み上げと呼ばれる株価急騰が起きるケースも生じます。
このように、制度信用取引では半年間で決済を行わなければならないという性質があるため、信用売り、もしくは信用買いのどちらかが大量にある場合、場合によっては株価が急騰したり、急落したりする可能性がある、ということには注意が必要です。
■食い合いの状況は各証券会社のページなどで
こうした食い合いの状況は、各証券会社の取引きページにおいて公開されていますので、株の売買を行う際には仮に信用取引を行わない場合であったとしても、信用買いと信用売りの残高をチェックし、食い合いがどのように動いているのかを確認するようにしましょう。