■名寄せとは
名寄せとは、一言で言ってしまえば、同じ人を一つにまとめることを意味しています。
つまり、株式投資においては、別々の証券会社からある銘柄を購入したとしても、その会社が「株主名簿」を作る際に名寄せをされ、別々の証券会社から購入した様々な株数が合計されることになります。
■複数の証券会社から分散しても株主優待は増えない
投資に関心を持ち始め、株主優待に目を付けた人の中には、一つの銘柄に対して優待が受けられる最小株数を複数の証券会社から購入したらいいのではないか、と考えたことがある投資家の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
たしかに、株主優待は多くの場合、一つの銘柄を大量に購入するよりも、株主優待がもらえる最小株数だけを保有していた方が投資金額に対して貰える株主優待のリターンは大きくなる傾向にあります。
例えば、株主優待で人気の全日本航空(ANA)では、1000株で半年に一度、一つだけ株主優待番号を発行してもらえ、ANAの飛行機に格安で乗ることができます。
しかし、この10倍の投資をして、ANAの株を1万株保有したとしても、発行してもらえる株主優待番号は7つしかありません。
このように、多くの株主優待では優待が受けられる最小株数のみを購入するのが最もリターンの高い投資の方法となりやすいため、その恩恵をできる限り受けたいと、一つの証券会社から一括して購入するのではなく、複数の証券会社から最小株数のみを購入し、それぞれの証券会社から株主優待を貰おうと画策する気持ちも分かります。
しかし、名寄せによってこうした試みは無意味なものになり、結局は非効率的な投資となってしまうので注意が必要です。
そのため、株主優待を効率的に受け取るためには、複数の銘柄に最小株数ずつ投資を行うか、家族の名義を使って証券口座を開いて投資をするといったようにやや回りくどい方法を取る必要があります。
■銀行での名寄せの注意点
これと同様に、同じ銀行の口座を複数保有することになった場合にも、名寄せが行われ、一つの名義の下で管理されることには注意が必要です。
現在では、ペイオフによって一つの金融機関一人の預金者あたり元本1000万円までとその利息までが、金融機関が破たんしたとしても補償されています。
こうした仕組みの逆手にとろうとして、例えば、X銀行の丸の内支店で「普通預金口座」を作り、またその後、同じX銀行の新宿支店で「定期預金口座」を作って、それぞれ1000万円ずつ預けたとしても、それが同じ銀行内である限り、名寄せをされてしまうことになります。
その結果、合計で2000万円を預けていることになり、半分の1000万円はその銀行が破たんした際には補償されなくなってしまいます。
そのため、しっかりと「定期預金口座」と「普通預金口座」にそれぞれどれだけの金額を預けているかを把握し、1000万円を超えた部分については、素直に他の銀行に預けるといった工夫が必要です。