ハーディング現象

■ハーディング現象とは何か

ハーディング現象とは、英語の「Herd」(群れ)という単語から来ている言葉で、人間は他人・多数の考えにあわせて行動しやすい性質がある、ということを指します。

私たちの身近な現象で言えば、流行となっている商品を購入する、行列が更に行列を呼ぶ…などといったものです。

ハーディング現象は「行動経済学」におけるひとつの見識として知られていますが、行動経済学における類義語としては「バンド・ワゴン効果」も挙げられるでしょう。

行動経済学は「人間は一見合理的なように見えて非合理な行動を行う」「人間が作り出す経済もそういった心理的な一面から生まれる非合理性がある」という視点を持つもので、株式投資・経済学においても注目されている学問のひとつであると言えます。

■行動経済学は投資にも役に立つ?

株式投資におけるハーディング現象の例としては、「買われている株が更に買われ、高値を更新していく」という事例があります。

また、リーマンショックの発端となったサブプライムローン市場のバブル化にも、ハーディング現象の非合理性が垣間見えていたと言ってよいでしょう。

特に投資の初心者だと、上がっている株はもっと上がるのではないか、ということを直感的に考えてしまい、買いを入れてしまい高値掴み…というようなケースが考えられます。

人間は意思決定の際に論理的な考えをするのとは別に、過去の経験に基づく判断をする「ヒューリスティクス」という性質があると行動経済学では提唱されています。

例えば掛け算をするときや、日々の習慣をするときにこのヒューリスティクスは有効に働いているわけですが、こと投資においてはその思考はあだとなることがあるかもしれません。

ルールに基づかない、感情的な投資判断というのは統計的に優位性を持たず、その手法がいつも通用するとは限らないためです。

「個人投資家の9割は負ける」というようなことがよく言われていますが、その中の多くに、こういった人間の不合理性や心理を理解出来ていないことによる失敗が含まれているのではないでしょうか。

それでは、こういった「負ける9割」にならないために、私たちは投資においてどういった姿勢で臨めばよいのでしょうか?

■メタ認知は重要

トレードにおいて、「これをすれば必ず勝てる」といった考え方・手法は存在しないと言えますが、重要になってくるのは「メタ認知」です。

「メタ」(meta)とは「~を超えた」「~を含んだ」という意味の接頭語で、「メタ認知」は「認知を認知すること」を指します。

認知を認知、と書くとややこしいですが、自分が何を考えているか、自己を客観的に見れている状態のことを指すと言ってよいでしょう。

自分が今何をしているか、ということは、今までの自分の経験上からしか言い表すことが出来ません。

しかし本を読んだり、新たな概念を知ることによって、その行動を新たな表現で言い表すことが出来るようになるわけです。

行動経済学は人間の科学的心理について注目しており、「現状維持バイアス」「損失効果」といった人間心理は、私たちの考え・行動を客観的に見る手助けとなるでしょう。

投資をしている方ならお分かりになるかと思いますが、勝っているときには冷静なトレードが出来るものの、負けているときにはパニックになったり、メンタルがぶれたりして適当なトレードを行ってしまう、ということ経験があるのではないでしょうか。

当然失敗や損失を被ることは誰にでもあるわけですが、それを反省し改善していくためには当然「なぜ失敗したのか?」を省みることが大事です。

その過程において、メタ認知は失敗を言語化・具体化するのに役に立つものになるのではないでしょうか。

■メタ認知を身に着けるには

メタ認知を身に着ける方法としては、先に書いたように本を読んで新たな知識を身に付けたり、自らの行動を改善するサイクルを描くことを習慣化する、といったことが挙げられます。

自分が気付いていない考えやクセに気づき、それをどう矯正していくか、というのを意識して生活してみるのも良いかもしれないですね。

「ハーディング現象」という言葉を知っておけば、特に意味もなく買われすぎている相場に対して、「ハーディング現象だから、ここは逆張りをすると儲けられるのではないか?」という視点を持つことが出来ます。

周りの考え方に同調するのみでなく、それに対して自分の投資の軸をしっかり持っておくことで、投資・考え方の幅を広げることが可能になるでしょう。

ハーディング現象に限らず、行動経済学の知識を学んでおくことは投資を行ううえでも役に立ちますので、学習しておくと良いかもしれません。

120903

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