■親引けとは?
親引け(おやびけ)、というのは株式発行会社が、新規株式公開(IPO)または増資の際などに、株式の割り当て・販売先を特定し売りつけを行うことです。
特定の指定先に好きなだけ株式を発行・販売することが可能になってしまうと、その投資家だけが得をするようになるケースや、株主比率が極端に偏ってしまうケースが発生することが考えられます。
個人投資家の株主比率が小さくなりすぎると、株式の流動性の低下などを招き、また取引の公平性・平等性が損なわれることがあるため、例外を除いて基本的に親引けは制限されています。
■親引けと第三者割当増資
「特定の指定先に発行株式を売り渡す」ことを親引けと言いましたが、「第三者割当増資とは何が違うのか?」と思われた方もいるかもしれません。
親引けも第三者割当増資も、株式を発行して(特定の)第三者に新株を引き受けさせる、という共通点があるためです。
両者の大きな違いとしては、そのプロセスに透明性・平等性があるかどうか、というのがポイントとなるでしょう。
第三者割当増資は、既に上場している会社が資金調達のために新株の発行を行う、というのが基本的な考え方です。
広く調達先を募る公募増資とは違い、会社に関係のある主体や、金融機関に新株を調達させるというのがポイントのひとつであると言えます。
第三者割当増資の場合は、発行価額が市場価格より優位にならないようにするなど、既存株主に配慮した設定が行われることが多いです。
それに対し親引けの場合は、「公募形式」で株式の売り渡しを公言しているも、その一部を特定の指定先に引き受けさせている、というものです。
公募形式よりも有利な価格で指定先に引き渡し、株価上昇の恩恵を受けさせるという背景があったため問題視されていました。
第三者割当増資と比較して、既存株主や個人投資家が潜在的に損を被ってしまう場合があるのが親引けであると言えます。
ちなみに増資には主に「株主割当増資」「公募増資」「第三者割当増資」の3種類が存在しますが、どれも行われる場合は基本的に企業による開示がなされます。
が、規制前の親引けが行われていたケースでは、その親引け先が詳しく公表されていないケースがあり、そういった点でも株式引き渡しにおける透明性が損なわれていたと言えるでしょう。
■親引けの例外
親引けは今まで見てきたような点から規制がかかってきたものの、「安定株主・流動性の確保」等といった観点から、親引けが認可されるようなケースもあります。
買い需要が極端に少ないような会社の場合、親引けをすることで長期的に株式を保有してくれる株主を確保できる、といったメリットがあるためです。
人気の少ないIPOの場合は、公募価格割れをしてそのまま売買高・買い需要が増えず、という事例もあり、そういった欠点をカバーするために親引けが使われます。
安定した長期保有を行い、かつ資金が大口である投資家を「コーナーストーン投資家」と言いますが、親引けの規制緩和とともに注目されるようになってきている言葉だと言えるでしょう。
他にも親引けが例外的に使用される事例としては、親引けにおける取引条件を詳細に公表する・一定期間買い付けた株式を売却できないようにする(いわゆるロックアップの一種)等といった場合が挙げられます。
その透明性と公表性が明らかになっているのであれば親引けも優位に働く、と言って良いでしょう。