株式取引において意識したいのが「需給」。
その需給を知るためのひとつの方法として、「貸借倍率」をチェックする、というものがあります。
この記事ではそもそも貸借倍率とは何か?ということから始め、貸借倍率を意識したトレードのコツなどについて見ていきましょう。
■貸借倍率とはなにか
「貸借倍率」とは信用取引の可能な「貸借銘柄」の日証金速報における信用買い残と信用売り残の倍率です。
1倍以上の場合は信用買いの方が多くなっており、1倍以下の場合は信用売りが多くなっているという状況です。
日証金によって毎日発表される貸借倍率と似ているのが「信用倍率」で、こちらは先週末の信用残高の倍率を表すものとなっています。
(貸借倍率、信用倍率の一例) 貸株は信用売り、融資は信用買いを指す
貸借銘柄は東証一部銘柄に多く、マザーズやJASDAQのような新興銘柄にはほとんど存在しません。
新興銘柄は信用売りが出来ない代わりに、「プレミアム空売り」「HYPER空売り」といった空売りサービスを提供している証券会社があります。
■貸借倍率からある程度の需給読みをしよう
この貸借倍率・信用倍率から我々は何を知ることが出来るのでしょうか?
ひとつは「将来の買い・売り需要を予測できる」ということです。
信用倍率の場合、多くはそのポジションを6か月以内に清算しなければいけないという決まりが存在します。
そのため信用買い残が多ければ多いほど将来の売り圧力が大きいことを暗に示しています。
当然それで株価が下がるかどうかは出来高や浮動株数にもよりますので、そういった点との比較も必要となってくると言えるでしょう。
やや長期的な需給動向の読みに役立つ信用倍率に対し、貸借倍率は1日ごとに公表されるものであるため、短期間における需給読みに適しています。
例えばある銘柄が急騰すると、「この急騰は上がりすぎ」という考えで信用売り(空売り)をするトレーダーが必ず登場します。
そういった空売りを巻き込んで上昇し続けると、「株不足」という状況に陥り、信用売りが不可能になる「売り禁」が発動されることがあります。
貸借倍率が1を割り、0.3ほどとなり空売りが多いにも関わらずストップ高、というようなケースはいわゆる踏み上げ相場ということができ、空売りのロスカットを巻き込んで更なる株価上昇の材料になることが考えられると言えるでしょう。
そのため突然出来高が急増し盛りあがりを見せた銘柄においては、日証金速報をチェックし貸借倍率から買いと売りがどう入ったか、を読むことが重要だと言えるでしょう。
■売り禁に買いなし?好取組は買い?
相場のひとつの格言として、「売り禁に買いなし」という言葉があります。
信用取引の規制として売り禁がなされると、新たに信用売りをすることが不可能になります。
新しい信用売りが出てこない、というのは一見株価が上がる材料にも思えますが、それは買いに対する売り需要が減ったということも意味し、流動性の低下を表しています。
なので一般的には売り禁に買いなし、ということを言うわけですね。
当然売り禁が出た後にさらにもう一段階値上がりをする、という相場も存在しますが、やはり急騰の後は大きな調整をすることが多いです。
また、信用売りが多く、信用倍率が引く銘柄のことを「好取組」ということがあります。
先に書いたように、信用売りは将来の買い圧力となるわけですから、ある程度の株価上昇が予見されるためです。
ただし、そういった銘柄がいつ上がるか、ということは分からないですし、信用残高と日々の出来高などとの比較を行う必要があるため、好取組だからと言ってすぐに買い、ということにはならないでしょう。
あくまでも信用倍率・貸借倍率はひとつの尺度として考えておくとよいと思います。