孫子の兵法から学ぶトレード学

【孫子の兵法とは】

みなさんは「孫子の兵法」をご存じだろうか。

孫子の兵法とは、紀元前500年前に中国の武将「孫武(尊称:孫子)」が記したとされる兵法書のことである。

古来から伝わる孫子の考えは、現在ビジネスの場において広く活用されている。

株式投資にも応用が利きそうだ。

そこで、本ページでは投資に役立ちそうな考えをまとめていく。

孫子の兵法の内容は以下の13篇から成る。

  • 計篇
  • 作戦篇
  • 謀攻篇
  • 形篇
  • 勢篇
  • 虚実篇
  • 軍争篇
  • 九変篇
  • 行軍篇
  • 地形篇
  • 九地篇
  • 火攻篇
  • 用間篇

・計篇

「勝算のない経営をしてはならない」

勝てる見込みがないのに戦うのは愚の骨頂だ。

戦う前に勝ちを確信できるか。

そうでなければ、おそらく負け戦となるだろう。

何気なく戦ってはいけない。

株式投資は、勝てる見込みがあっても存外負けるものである。

自信のある勝負だけ挑もう。

・作戦篇

「経営は拙速を尊ぶ」

戦争の目的は勝つことであり、戦い続けることではない。

完璧を期して戦いが長期化するよりも、少々拙い点があっても速やかに事を進めるべしと説いている。

長期戦は軍を疲弊させるだけだからだ。

株式投資においては、長期投資も考えられる。

ただ、長期投資でも勝算のない勝負はいけない。

すなわち、塩漬けのことである。

塩漬けは計画的な産物ではないため、勝算があるとはいえないのだ。

・謀攻篇

「戦わずして勝つ」

戦いによって勝利を得ても、失うものはある。

戦争でいえば、自軍の兵だ。

敵よりも被害は小さいとはいえ、パワーを消耗している。

株式投資においても、無駄な取引は慎んだほうが賢明かもしれない。

「彼を知り己を知り勝利を見極めよ」

敵と自分の状態を把握して、勝利を掴めということ。

勝負事で、勝つために敵をリサーチするのは当たり前ともいえる。

敵の弱点をみつければ、戦局を有利に運べるからだ。

しかし、自分にも弱点はある。

それを補ってこそ磐石の態勢だ。

株式投資で例えてみよう。

銘柄選びは完璧だったのに、体調を崩して仕掛けの判断を誤った。

この場合、体調管理まで努めていれば勝てたかもしれない。

自己の管理までしっかり行って、はじめて完璧といえるのだ。

・形篇

「負けない備えを優先せよ」

戦上手は、まず自身の守りを固め、次に相手の弱点を露呈する。

負けない工夫は自分でできるが、勝てるかどうかは相手次第だ。

株式投資でも同じことがいえる。

資産を守るために損切りを徹底し、大きな利益が出るのを待つ。

利益が出るかどうかは運も絡んでくる。

自分でコントロールできる範囲を優先しよう。

「勝ってから戦う」

勝者は勝ちを確信してから戦い、敗者は戦ってから勝ちを求めるということ。

株式投資では勝ちを確信するのが難しい。

だから全力投資は危険なのである。

負けたときのリスクを考えて、分散投資することが望ましい。

・勢篇

「正には奇、奇には正」

勝負は正法によって対峙し、奇法で勝利を収める。

正法と正法がぶつかった場合は、力の強い者が勝つ。

ゆえに力の弱い者は、正面衝突を避けねばならない。

そこで奇法を用いるのである。

株式投資で例えるなら、機関投資家が強者、個人投資家が弱者だ。

資金量で個人投資家は機関投資家に勝てない。

同じ戦い方をしていてはダメだ。

個人投資家にしかとれない戦略を選ぼう。

「勢いとタイミングが重要」

普段ビクともしない岩が激流によって流されるのは、水に勢いがあるからだ。

水そのものにパワーがあるわけではない。

しかし、勢いがあっても水の量が少なければ岩を押し流せない。

水の量が集まるタイミングも重要なのだ。

勢いとタイミングを味方に付ければ、弱者が強者を倒すことも可能だ。

そのためには大局観と判断力を養うべきだろう。

・虚実篇

「主体的に戦略ストーリーを描け」

自ら構想を練ったとおりの戦いは勝ちやすい。

主導権を握れるからだ。

一方、相手の構想に乗せられてしまった場合、こちらは受身の戦いを強いられてしまう。

主導権が敵味方どちらにあるかで勝敗を大きく左右する。

株式投資も同じだ。

銘柄は人に聞くのでなく、自分で選ぼう。

「相手の意図をつかみとれ」

勝負において、相手との駆け引きは重要だ。

相手がどう動くか把握することで、局面を有利に動かせる。

そのために洞察力は欠かせない。

株式投資では、売り方と買い方のどちらか多いほうが勝つ。

自分が買い方で参加しているのなら、売りの出方を窺う。

売り方が更に売り増そうとしているのか、撤退しようとしているか、わかれば自ずと利益は出てくるだろう。

・軍争篇

「迂をもって直となす」

遠回りを近道に変える戦術を「迂直の計」という。

それを可能にしているのが、短期戦術と長期戦略だ。

2つは別のようだが、繋がっているのである。

株式投資も短期投資と長期投資がある。

投資する期間は異なるが、考え方はそれぞれ取り入れることができるだろう。

・九変篇

「利害両面を見極める」

メリットとデメリットの両方を把握せよということ。

株式投資では、投資法によってメリットとデメリットが異なる。

短期投資→資金の回転が良いが、トレード1回あたりの利益は小さい。

長期投資→トレード1回あたりの利益は大きいが、資金の回転が悪い。

どちらの投資法が優るわけでなく、自分のスタイルに適したほうを選ぼう。

・行軍篇

「原理原則を知り兵の利となす」

何事も原理原則を知らずして応用は利かない。

投資の世界ではトレンド通りに売買することがセオリーとされているが、それはあくまで基本にすぎない。

大きな波の中に小さな波があることを知っていれば、逆張りを使えるのだ。

・地形篇

「定石を知ってこそ定石を破れる」

セオリーを知らなければ、それを上回るアイデアは浮かんでこない。

戦いには4つのパターンがある。

1.相手も自分も定石を知っている(優劣=5:5)

力が拮抗している状態。

状況を打破するアイデアがほしい状況だ。

2.相手だけ定石を知っている(優劣=2:8)

相手が有利な状態。

まずは定石を覚えて、相手と肩を並べよう。

3.自分だけ定石を知っている(優劣=8:2)

自分が有利な状態。

定石どおりに勝とう。

4.相手も自分も定石を知らない(優劣=5:5)

泥試合な状態。

先に定石を習得し、主導権を握ろう。

自分は定石を知っているのかどうか、今一度確認してみよう。

株式投資でいえば、移動平均線などの基本指標をしっかり熟知しているかだ。

「地も知り天も知ってこそ」

確かな勝利を得るには、全てを把握せよということ。

味方の状態、敵の状態、環境、時期。

どれか1つでも情報が欠けていたら万全の態勢とはいえない。

強者は情報収集に余念がないといえる。

株式投資は情報戦だ。

他の投資家よりも多くの情報を得よう。

・九地篇

「強大な敵に対しても戦い方がある」

たとえ相手が強くても、戦い方次第で勝機を見出せる。

株式投資における強敵は、圧倒的な資金を持つ機関投資家だ。

しかし、彼らにも弱点がある。

お客に利益を還元しなければならないから、短期投資しかできないのだ。

一方、個人投資家は長期投資も選択できる。

強みと弱みを把握することで、その相手に適した戦法を取れるだろう。

・用間篇

「攻める前に周到に諜報すべし」

決戦は一瞬で勝負がつく。

だから、それまでの準備がものをいう。

株式投資も同じだ。

売買した後は見守るだけだから、準備に時間を費やすべきだ。

・火攻め篇

「手段と目的を履き違えてはならない」

戦いは手段であって、目的ではない。

故に利益の出ない無駄な戦いは避けるべきなのだ。

株式投資も手段であって、目的はお金を得ることだ。

稼げそうもない相場で、無闇にトレードすべきではない。

【最後に】

兵法書ではあるが「百戦百勝は善の善なるものに非ず」という言葉が記されており、意外にも孫子は非好戦的であることがわかる。

これは戦うことによって、国力を消耗するからだ。

無駄な戦いを避け、いかに上手く勝つか。

この一点に重点を置いている。

我々投資家も見習うべき姿勢だ。

闇雲にトレードしては、いつか落とし穴にはまりかねない。

好機が訪れるまでじっと待ち続ける忍耐が必要なのである。

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