■テクニカル分析を賢く使うためにも落とし穴を理解すべき
包丁もうまく使いこなせれば美味しい料理を作るのに役立ちますが、使い方を誤れば自分の指を傷つけることにもなってしまいます。
テクニカル分析を使う際にも、その良い面と悪い面をしっかりと理解し、悪い面がなるべくでないようにしながら良い面を活かしていくというのが賢い利用法だといえるでしょう。そこで、今回はテクニカルを使う際の注意点について分かりやすく説明します。
■結局は主観に大きな影響を受けてしまう
ファンダメンタルズ分析は様々な情報を考慮してその企業の実力を割り出すというように、やや曖昧で主観的な分析であるのに対して、テクニカル分析はある程度は定石が決まっており機械的に投資を行うことができるという特徴があります。
例えば、「移動平均線が上向きの場合は上昇トレンドなので買い」や、「短期の移動平均線が長期の移動平均線を下回れば売り」だとか、「ローソク足の上ヒゲが長い場合は上昇に対する抵抗が強いので売り」といったように、ファンダメンタルズ分析と比較して客観的に投資を行うことができます。しかしながら、現実に個人の投資家がテクニカル分析を行う場合、例えば移動平均線を見れば買いだけれども、ローソク足のヒゲをみると売りになっているということが起こりえます。そのため、結局はテクニカル分析のどのルールに沿って投資を行うのかはかなりの部分が投資家の主観に任されてしまうことになります。
また、そうしたテクニカル分析のいくつかのルールを解釈する際に、投資家の心理を冷静に読んでその逆手をとらなければならないにもかかわらず、テクニカル分析の使い手の心理もまた相場の心理に飲まれてしまうということが多々あります。例えば、株が売られ続けており、そろそろ買いのサインが出ている銘柄が存在していたとしても、そうした相場の動向に逆らってその株を購入するというのは非常に勇気がいります。そのため、自分の予測と少しでも違う株価の動きが起こった際に、自信を失ってすぐに売ってしまうという行動をとることがあります。
このように、テクニカル分析はファンダメンタルズ分析と比較して、機械的に投資を行うことができるという特徴がありますが、しばしばテクニカル分析を利用する投資家はやはり主観的な側面からなかなか逃れることができないという落とし穴があります。そのため、テクニカル分析を利用する場合には、徹底してルール通りに投資を行う強い精神力が求められるともいえます。
■売買のルールを明確にする必要がある
テクニカル分析は過去の株価の動きから人々の投資行動をパターン化し、そのパターンをうまく利用することで利益を出す投資手法であることは他のコラム記事でも何度か説明してきました。しかし、テクニカル分析を用いたとしても、すべての現象をチャートだけで説明できるわけではもちろんありません。
別の言い方をすれば、テクニカル分析は投資家の投資行動をパターン化することで上昇トレンドなのか下降トレンドなのかを当てる勝率を高めるために用いられると理解した方がよく、テクニカル分析による予測が外れてしまうことももちろんあります。そのため、テクニカル分析で利益を出している投資家によれば、25日移動平均線を見るだとか、3日移動平均線を見るといった細かいパラメーターの設定はテクニカル分析においてはそれほど重要ではありません。
より重要なのは、自分の予想と異なる値動きとなった場合に、ロスカットをいつ執行するのかといった資金の管理ルールをしっかりと確立しておくことです。そのため、テクニカル分析の基本的な考え方を学ぶと同時に、投資の売買ルールを明確に決めておく必要があるという落とし穴があることには注意が必要です。
■落とし穴はあるけれども、コンピューターが高い運用成績も
ここまで説明してきたように、テクニカル分析にはその投資のルールが結局都合のよい状況だけを選んで作った作為的なルールが蔓延してしまっているという批判や、機械的に投資ができるはずのテクニカル分析も結局は主観的なものに大きな影響を受けるという批判などを受けることもあります。
しかしながら、そうした批判をしっかりと受け止めて、作為的でないルールを見極める目を持ったり、ルール通りに投資を行う強い意志を持つことでテクニカル分析の落とし穴を回避することも可能です。実際に、証券会社ではテクニカル分析の手法を応用してコンピューターに自動で売買させることで、優れた運用成績を出し始めてもいます。
そのため、テクニカル分析が多くの批判にさらされているからといって、無視するのではなく、しっかりとその問題点を理解して、良いところを引き出しながら、問題はなるべく生じないように心がけて投資をするというのが賢明な道でしょう。