株式取引を行い、配当金や売却益が生じた場合には、税金がかかってきます。
その税金をどう納めるかが問題となりますが、確定申告をする方法としない方法で若干扱いが異なるので、注意しましょう。それぞれの方法について、特徴をご説明します。
■確定申告をしない方法
最初に、確定申告をしない方法についてご説明しましょう。
□基本
上場株式等の配当、公募株式投資信託の収益分配金を受け取る場合には、20.315%(所得税15.315%、住民税5%)の税金が天引き(=源泉徴収)されています。この税金について、確定申告をしない=申告不要を選択した場合は、天引きされた時点でそのまま税金を納めることになります。
書類を作成し、提出する手間がかからないのが大きなメリットですが、後述する損益通算、配当控除などは受けられないのがデメリットです。なお、配当・収益分配金の金額の大小に関わらず、申告不要を選択できるのも覚えておきましょう。
□選択の幅
配当・収益分配金を受け取るごとに、確定申告をするかしないかは選択できます。例えば、Xという銘柄の株式取引については確定申告しない、Yという銘柄の株式取引については確定申告する、というように、扱いを分けるのも可能です。
■確定申告をする方法
次に、確定申告をする方法についてご説明しましょう。
<<総合課税>>
最初に、総合課税についてみてみましょう。
□基本
配当・収益分配金を配当所得として申告書に記載し、申告する場合に、他の所得(給与所得・不動産所得・雑所得等)と合算して税金を計算する方法です。なお、この場合、所得税は5~45%(累進税率:所得額により税率が変わります)に復興特別所得税を加算して計算、住民税は10%として計算します。
□配当控除
この方法により確定申告をした場合には、配当控除の適用が受けられます。配当は、企業が法人税を支払った後の利益をもとに支払われますが、この配当に所得税をかけてしまうと、法人税と所得税が二重に課税されてしまいます。これを回避するため、配当控除の制度を設けているのです。
なお、日本の税法に基づく法人税を支払っている企業が前提の制度であるため、外国法人やJ-REITからの配当については、配当控除は受けられない点も押さえておきましょう。
□確定申告を行う際のプロセス
実際に確定申告を行う際のプロセスについてご説明します。
1)配当所得と他の所得を合算し、日本企業からの配当等について配当控除を適用する。
2)その上で、所得税と住民税を計算し、源泉徴収された税金との差額を精算する。
3)確定申告書を提出する際には、「上場株式配当等の支払通知書」等を添付する。
なお、「上場株式配当等の支払通知書」には、次のいずれかが含まれます。必要に応じて用意してください。※後述する分離課税でも用いられます。
・オープン型証券投資信託の収益の分配の支払通知書
・配当等とみなす金額に関する支払通知書
・上場株式配当等の支払通知書
・特定口座年間取引報告書
また、確定申告書への記入手順ですが、次の2点を押さえておけば十分です。
1)「配当金等の収入金額(税込み)」「配当所得の金額」「配当控除額」を、申告書第一表に記入する。
※ 配当所得の金額=配当金等の収入金額(税込み)-(株式を取得するために借り入れた)負債の利子
※ 配当控除額=源泉徴収額
2)申告書第二表の「所得の内訳」「雑所得(公的年金等以外)、総合課税の配当所得・譲渡所得、一時所得に関すること項」「住民税・事業税に関すること項」の各欄に、該当する事項・金額を記入する。
わかりにくい場合は、税務署・証券会社等の担当者に質問してみましょう。
<<分離課税>>
次に、分離課税についてみてみましょう。
□基本
配当・収益分配金を配当所得として申告書に記載し、その際に他の所得とは別に単独で税金を計算する寳保うです。
なお、この場合、所得税は15.315%、住民税は5%として計算します。
□損益通算
分離課税の特徴として、損益通算ができることが挙げられます。損益通算とは、同じ年の株式売却利益と相殺しきれずに残った上場株式等・公募株式投資信託との売却損失(=赤字)について、確定申告を行うことで、同じ年に受ける上場株式等の配当・公募株式投資信託の収益分配金(=黒字)と相殺できる仕組みです。これにより、税金が安くなる効果があります。
□確定申告を行う際のプロセス
1)配当所得について、損益通算を行う。
2)その上で、所得税と住民税を計算し、源泉徴収された税金との差額を精算する。
3)確定申告書を提出する際には、「上場株式配当等の支払通知書」等を添付する。
また、確定申告書への記入手順ですが、次のポイントを押さえてください。
1)「所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表」、「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」(前年分からの繰越譲渡損失を本年の配当所得から控除する場合に必要)を作成する。
2)申告表第二表の「所得の内訳」欄と、「住民税・事業税に関すること項」欄に、該当すること事項・金額を記入する。
3)「所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表」や「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」をもとに、申告表第三表(分離課税用)の「株式等の譲渡」「上場株式等の配当」「分離課税の上場株式等の配当所得に関すること項」の各欄に必要事項を天気する。
4)申告書第三表の「税金の計算」「その他」、申告表第一表の「税金の計算」「その他」に必要事項を記入する。
なお、実際の手続きを行う際は、「所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表」「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」の作成がやや複雑なため、国税庁が発行する「株式等の譲渡所得等の申告のしかた(記載例)」というガイドブックにしたがって記入しましょう。
ガイドブックは税務署でも入手できますし、国税庁ホームページでダウンロードするのも可能です。
事前に入手して一読し、不明な点は税務署・証券会社等の担当者に質問するのをおすすめします。