経済学者であり、投資家でもあったベンジャミン・グレアム。
ウォーレン・バフェットを億万長者に導いた、育ての親として有名である。
株式投資の先駆者ともいえる、彼ならではの名言に迫ってみよう。
【プロフィール】
ベンジャミン・グレアム
1894年5月8日、英国ロンドン生まれ。
経済学者・投資家。
「バリュー投資の父」「ウォール・ストリートの最長老」と呼ばれている。
ロンドン生まれだが、一歳のときにアメリカへ移住している。
コロンビア大学を卒業したあと、投資会社グレアム・ニューマン社を設立。
1929年、株価大暴落と世界恐慌によって経済的に困窮した。
これがきっかけで、健全な投資法を研究し始める。
【名言】
- 投資に成功するカギは自分自身に内在する。
成功は自分の力で成し遂げなければならない。
他力本願ではいつまで経っても成功しないのである。
自分がいかに学び、研究するかは己にかかっているのだ。
- 過去50年以上にわたる経験と市場観察によれば、「テクニカル・アプローチ」によって、長期にわたり利益を上げた者などひとりもいない。
グレアムによれば、テクニカル分析で長期間利益を上げ続けた人物などいないとしている。
つまり、長期にわたって活躍できる投資家は、皆ファンダメンタル分析を欠かさず行っているとも考えられる。
生き残るためにも、ファンダメンタル分析を身に付けよう。
- 個人投資家にできないことは「プロのゲームでプロに勝つこと」、自分のゲームで自分にコントロールできることで勝てば良いのだ。
一言でいえば、戦う土俵を考えろということ。
勝てないところで勝負を挑むのは愚の骨頂だ。
ここでいうプロとは、機関投資家のことである。
彼らに勝とうとすれば、莫大な資金が必要だ。
例1.A銘柄であなた(買い方)と機関投資家(売り方)が1対1で戦うとする。
機関投資家が10億円の資金を使って空売りを仕掛けてきた。
あなたがこの勝負に勝つにはどうしたらよいか。
10億円以上の資金をつかって買い上げるしかない。
しかし、個人投資家で10億円以上の資金を持っている人などそうそういないはずだ。
ましてや、機関投資家が追加資金を投入してくるかもしれません。
これは戦う土俵を間違えている。
個人投資家が戦える土俵を考えてみよう。
例1ではプロ相手に真っ向勝負となってしまったのが敗因だ。
だから、違った角度から戦いに参加してみる。
例2.B銘柄で機関投資家(買い方)と機関投資家(売り方)が1対1で戦っている。
機関投資家(買い方)が10億円の資金を投入、機関投資家(売り方)が11億円の資金を投入し、売り方がやや有利な状況だ。
このタイミングで、あなたが売り方として参加したらどうだろうか。
なんだか勝てそうな気がしないでもないはずだ。
関ヶ原の戦いにおける小早川秀秋を彷彿させる。
戦い方一つで状況は一変したのである。
何もプロと直接やりあう必要はないということだ。
- 銘柄選択に関してわれわれが強調してきたアドバイスは「除外」すること。つまり、そうとわかるほど質の劣った銘柄を「除外」し、また優良銘柄であっても株価が高く投機色が強いものは「除外」せよということである。
消去法で銘柄を選べと言っている。
2016年3月4日現在、東証に上場している企業は3,507社にのぼる。
その数から、銘柄選びに頭を悩ませている方もさぞいることだろう。
3507社の中で一番良い企業を探し出すのは至難の業だ。
しかし、買ってはいけない銘柄というのは、大方検討がつくものである。
業績が著しく悪く、上場廃止寸前である銘柄をわざわざ買う必要がない。
このような銘柄を選択肢から外すだけで、飛躍的に投資成績は良くなるのだ。
また「投機色が強いものは除外せよ」とあるが、これはリスクを抑える意味がある。
投機が行われる銘柄というのは、株価のボラティリティが非常に高くなる。
大儲けすることもあるが、大損する可能性も含んでいる状況だ。
リスクを考慮に入れると、安易に手を出すべきではない。
この名言には、”投資はリスクを最小限に抑えよ”という教えが込められているのだろう。
- 上昇相場の終焉を示す確かな兆候のひとつとして、得体の知れない小企業の株式が、株式市場において長い歴史を持つ中堅企業の株価よりも高値で売り出されることが挙げられる。
わけのわからない小さな企業の株価までもが、高値で取引されるようなら、上昇相場の終焉も近いということ。
大企業や中堅企業の株価がピークを迎えたなら、残すは小企業の銘柄しかない。
その小企業の銘柄でさえ、高値で取引されるようなら、一相場終わったと考えるべきだ。
新興市場にまで資金が潤沢にまわったら、あとは引き上げるだけだからだ。
利確ラッシュが始まり、相場は暴落へ向かう。
こうして相場は繰り返す。
いつまでも上昇相場にうつつを抜かしている場合ではない。
- 天井値では明らかに買うべきではない。手堅い分析で正当化される以上の価格で買うべきではない。相場が極端に過熱している時には、一見割安かのように見える株にも手を出してはいけない。
割高な株は買ってはいけないとしている。
割安な株と比べた際、下落リスクが高いからだ。
また割安な株であっても、相場が過熱しているときは注意が必要となる。
全体の株価水準が高ければ、本来の意味で割安と言えなくなるからだ。
例1.市場のPER(株価収益率)平均が30倍
例1のような相場で、PER20倍の銘柄をみつけたとしても、これは割安と言えない。
業種にもよるが、本来PERは20倍前後が一般的なのだ。
故に、本当に割安と言えるのはPER10倍以下の銘柄となる。
現在の相場と照らし合わせて、本当に割安であるかどうか、判断してから買いたいものだ。
- 投機家の関心事は、株価の変動を予測して利益を得ることである。
投資家の関心事は、適切な証券を適切な価格で取得し保有することである。
投機家と投資家の違いを表している。
両者は目的やスタンスが異なるのである。
投機家というのは、リスクを承知の上で、短期間に大きな利益を目指す。
単なる利ざや狙いだ。
一方、投資家は企業を応援し、配当をもらうことを目的とする。
よく投機家が、ギャンブルだなどと悪者扱いされるがそうとも言い切れない。
投機家によって市場は売買が活性化されるのだ。
また短期間でお金を必要としている、事情のある人だっているだろう。
はて、あなたが株式投資をする理由はなんだろうか。
- 資金があるなら健全な証券を買うべきだ。これは昔からの常識である。株価が下がるのを待っていても利子は得られない。株価が下がったとしても買いそこなうかもしれない。いずれにせよ最良のタイミングを計って投資するやり方では、株のトレーダーか投機家になってしまう。
株式投資は時期よりも価格が大切だと説いている。
仕掛けるタイミングを窺うようなやり方は、投機であって投資ではない。
さすがはウォーレン・バフェットの師匠だ。
あくまで投機ではなく、投資をせよという考え方のようである。
【ベンジャミン・グレアムの人物像】
ウォーレン・バフェットと考え方が似ている。
正しい投資の在り方を示しており、投機には否定的だ。
投機で勝ち続けることが非常に難しいと熟知しているからだろう。
個人投資家が勝てる土俵を苦慮した際に、長期投資のスタンスにつながったと思われる。
長期投資は先見の明に加え、忍耐力が必要だ。
だから「長期投資=簡単」というわけではない。
マネしたくても、できないかもしれない。
考え方を参考にして、あなたはあなた自身のスタイルを貫けば良いと思う。