高頻度取引(HFT)

■高頻度取引(HFT)とは

高頻度取引(High Frequency Trading)とは、数ミリ秒から数秒といった非常に短い時間の中で売買を高速で繰り返す投資戦略や、そうした投資戦略を採用している取引業者のことを指します。

一般的に、高頻度取引を行うためには、極めて高い処理能力をもったコンピューターと、その売買を行うためのプログラムを組む必要があるため、個人で実行することは難しいと言われています。

■情報伝達・処理スピードを競う高頻度取引

この高頻度取引のキーポイントとなっているのが情報伝達・処理のスピードです。高頻度取引は市場に情報が流れた際に、その情報が株価に反映されるまでのほんの僅かな時間に売買を行うことで利益を上げていると言われています。

例えば、同じ業界に属しているといった理由から株価の連動性が非常に高い2つの銘柄AとBが存在しているとします。

このときに、その業界に関するポジティブな情報が流れた場合、銘柄Aと銘柄Bの株価はほぼ同時に上昇することになりますが、完全に同時に上昇するということはありません。銘柄Aの株価がほんの僅かな差で先に上昇し、それから数ミリ秒から数秒遅れて銘柄Bの株価が上昇するということが生じます。

そのため、銘柄Aの株価が上昇したことを察知することで、銘柄Bの株価が上昇するまでのほんの数ミリ秒から数秒の間に銘柄Bの株を購入することができれば、その後の銘柄Bの株価が上昇した瞬間に売却をすることで利益を得ることができます。

高頻度取引では、コンピューターの情報処理能力を活かして、普通の人では実行することができないほどの僅かな時間差を利用して、利益を生み出していると言われています。

■市場の効率性を改善する高頻度取引

こうした高頻度取引(HFT)がもたらすメリットとして市場の効率性の改善が指摘されています。

その理由の1つは、高頻度取引(HFT)が裁定取引を行うことによって、株価がいち早く正常な値に収束していくためです。先程の例にも出したように、高頻度取引(HFT)は、ある情報を他の投資家よりもいち早く察知し、それをもとに利益がでるように取引を行っています。

こうした取引はほんの僅かな時間差ではありますが、情報が株価に反映されることを早めることにつながり、その結果として株価が世の中に出回っている情報を正確に反映したものとなりやすくなっています。

このように、高頻度取引が行われることによって、市場がより効率的になっていると言われています。

■流動性プレミアムを低下させる高頻度取引

高頻度取引(HFT)がもたらすもう1つのメリットとして指摘されているのが、流動性プレミアムの低下です。ある銘柄の流動性が低い場合、その銘柄の買値と売値の差が拡がる傾向にあります。

それに対して、流動性が高い場合はその銘柄の買値と売値の差は低下します。高頻度取引(HFT)が行われることによって、非常に多くの売り注文と買い注文が市場に対して行われることになるため、株式への流動性が高くなり、それによって買値と売値との価格差が縮小する傾向にあると言われています。

買値と売値の差が縮小すれば、株式を購入した後に含み益が生じるまでの株価の上昇も少なくて済むようになるため、投資家にとっては株式投資から利益を得やすくなっていることを意味しています。こうしたことは、一般の個人投資家にとって高頻度取引(HFT)が行われることはメリットがあると言えるでしょう。

■高頻度取引(HFT)のデメリット

このようなメリットがある一方で、高頻度取引(HFT)は市場を不安定にさせているというデメリットがあることも指摘されています。

高頻度取引(HFT)では、短期間で膨大な量の取引を行うため、ポジティブな要因が発表された場合には大量の買いが入り、逆にネガティブな要因が発表された場合には大量の売りが瞬時に入る傾向があります。

そうして瞬間的に大量の買い注文や売り注文が入ることによって、瞬間的な急騰や、瞬間的な急落を生み出しており、市場を不安定にさせているという批判もあります。

それゆえ、欧米を中心に高頻度取引(HFT)はある一定以上価格が変動した場合にはプログラムが停止するような機能の導入などの対策が進んでいます。

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