■「幽霊と相場師は淋しい方に出る」とは
幽霊は人の気配があるところには出没せず、淋しい場所に現れるように、優れた投資家も人気を集めている銘柄に投資するのではなく、他の投資家からまだ注目されていない銘柄を探し出し、投資を行うものであるという相場格言です。
昭和を代表する相場師の1人である近藤信夫氏が残した言葉で、逆張りを勧めている言葉とも言えるでしょう。
■人気銘柄への投資は、ある意味では合理的
私たちは目立っている人気銘柄に目を奪われ、ついついその銘柄に投資してしまいがちです。
もちろんこうした行動はある意味では合理的です。
例えば、初めて訪れた観光地で、2つのラーメン屋が並んでいたとします。
そして一方は行列ができているけれども、もう一方は閑古鳥が鳴いている。
こんな状態を見れば、どちらのラーメンが美味しいか推測するのは簡単に感じるでしょう。
このように、人が何らかの選択をするにはそれなりの理由があるはずで、多くの人が同じ選択をしているということはその選択が正しい可能性が高いといえるでしょう。
民主主義で多数決が採用されているのも基本的には同じ理由です。
投資においても、ある銘柄が人気を集めているのには何かしらのポジティブな理由がある可能性が高いため、その銘柄への投資を検討するのはある意味では合理的とも言えます。
■ただし危険も多い
しかし、多数の人が選択した方が正しいとは限らないのが現実でしょう。
先ほどのラーメン屋の例をもう一度考えてみましょう。
2つのラーメン屋があり、一方は行列ができているから次に来たお客さんも「このお店が美味しいに違いない」と予想し、その行列に加わるという話でした。
けれども、最初にそのお店に入った人が、ただ単に適当にお店を選んだという可能性はないでしょうか。
例えば、ラーメン屋のオープン時間に団体客が一方のお店に適当に入って混雑する。そして、その次に来た客がその混雑具合を見て、団体客がいる方を人気店だと勘違いして入る。そうやって次第に行列ができてくるという可能性も十分に考えられます。
この場合、行列に並んでいる人は「みんな並んでいるから美味しいだろうな」と思って並んでいるため、ラーメン屋の質とは無関係に行列が出来てしまうことになります。
その結果、2つのラーメンの美味しさが同じであったとしても、たまたま団体客が入ったお店の方だけが人気を集め、もう一方のお店は過小評価されることになります。
投資の世界でも同じことは起こりえます。
たまたま新聞や雑誌などに取り上げられた銘柄が注目を浴び、投資をする人が増える。
そして、その人気ぶりを見た投資家が「これだけ人気があるのだから、きっと良い会社に違いない」と考えて投資することが起こりえます。
この場合、新聞や雑誌でたまたま取り上げられた企業が本当にベストな投資先かどうかとは無関係に、投資家たちが株を買い、株価は上昇していくことになります。
そして当然ながら、実力以上に人気を集めてしまった企業は、いずれ冷静になった投資家たちから過大評価だと判断されて、株価が急落していくことになります。
その一方で、過度に人気を集める銘柄があるということは、裏を返せば実力がありながら相対的に不人気となってしまい、過小評価されている銘柄も存在することになります。
投資の世界では、長期的には実力通りの評価を受けるようになることが多いため、こうした割安銘柄に投資すれば長期的には利益を得られる可能性が高いと言えるでしょう。
■思考停止せず、自分で情報を分析して投資をすること
人気銘柄は過大評価される傾向があり、その一方で過小評価されている銘柄も存在します。
重要なのは「他の人が投資しているから」というように思考停止せず、自分の頭で考えて投資先を見つけていくことだと言えるでしょう。