■投資をする際はメリットとデメリットの把握が必要
株主優待の魅力はなんといっても企業から贈られてくる魅力的な商品や商品券でしょう。
しかし、どんなものにもメリットもあれば、デメリットもあります。株主優待を目当てに投資をする場合にも、そのメリットとデメリットをしっかりと把握しておく必要があります。
そこで、今回は株主優待のメリットとデメリットについて分かりやすく解説します。
■株主優待のメリット:税金がかからない
株主優待のメリットの一つは、株主優待には税金がかからないということです。
株価の値上がりによって売却益を得た場合や配当金を受け取った場合、20%の税金がかかってしまいます。
それに対して、株主優待はほとんどの場合では税金がかかりません。
厳密にいえば、株主優待も所得税法によって雑所得として申告することが定められています。
そのため、受け取った株主優待の金額から株主優待を受け取るためにかかった必要経費を差し引いた金額が20万円を超える場合、その金額を雑所得として税務署に申告する必要があります。
しかしながら、非売品を提供している場合は価値をどう算定するのかや、商品であっても例えば、株主優待でお米を40kgもらった場合、その金額は定価で算定すべきなのか、スーパーなどの販売価格で算定すべきなのか、またスーパーによっても販売価格が違うのでどのスーパーの販売価格で算定すべきなのかといったように、株主優待で受け取った商品の価値を算定することは非常に難しいものとなっています。そのため、ほとんどの人が申告をしていないというのが現状です。
このように、厳密には株主優待は課税対象となってはいますが、実質的には税金がかかっていないものとみなしてよいでしょう。
■株主優待のメリット:確実な利益になる
もう一つの株主優待の魅力は、確実に得られる具体的な利益だということです。
株の売却益を追求する場合、株価が値上がりするとは限らず、常に不安が付きまといます。
それに対して、株主優待の場合は権利確定日に株主として登録されていれば確実にもらうことができるため、投資家にとっては安心感があります。
また、確実にもらえるため、計画を立てて株主優待を利用するということもできます。
例えば、ホテルの宿泊が無料になったり、割引になる株主優待を提供している企業の株を購入し、その株主優待を用いて夏休みなどに家族旅行に行くといったこともできます。
このように、株価の値上がりのように不確実なものではなく、確実に商品や商品券などの優待を受けることができるというのは株主優待のメリットの一つとなります。
■株主優待のデメリット:投資の複利効果を得ることができない
このように株主優待にはメリットがありますが、その反面デメリットもあります。
それは、投資の複利効果を得ることができないというものです。複利効果とは、運用で得た利益を再び投資にまわすことを指します。
元本だけに利子がつく単利と比較して、複利で運用した場合、利息に利息がつくことになるので、長い目でみると大きな差が生じることになります。
例えば、100万円を年率5%で運用した場合を考えてみましょう。
単利の場合、毎年5万円ずつ運用益を獲得できる計算になるため、5年間で25万円、10年間で50万円、20年間で100万円の運用益を獲得することができます。
それに対して、複利計算の場合、5年間では約28万円、10年間で約62万円、20年間では約165万円の運用益を獲得することができます。
5年では3万円ほどしか差はでませんが、20年も運用をしていると60万円以上の差が出てくるなど、長い目でみれば大きな運用益の差が表れてくることになります。
ちなみに、投資の世界では72の法則、または70の法則といって、72か70を複利で割ると元本が倍になるおおよその年数が分かるというのがあります。
例えば、5%の複利で運用した場合、元本が倍になるのは72を5で割った値の14.4年となります。
それに対して、単利の場合はそのまま100を割った値ですので、5%では20年もかかることになります。
こうしたことからも複利の威力の大きさを理解することができます。
このように、投資で獲得した利益をさらに投資に回していく場合、雪だるま式に運用益が増えていきます。
しかしながら、株主優待の場合、投資した企業の商品などをもらうことになるため、売却益や配当金と同様に株で獲得したものであっても株主優待で得たものを再投資することができず、単利での運用となってしまいます。
そのため、長期でみた投資成績が悪くなりやすい、というデメリットがあります。
■株価の動向にも要注意を
株主優待で企業の商品や、商品券、割引券などをもらえたとしても、株価が大幅に低下してしまい、株主優待でもらえた商品などの金額以上に損を出してしまっては意味がありません。
そうなってしまえば、そもそも株に投資せずに初めから自分で商品を購入しておけばよかったということになってしまうからです。
そのため、株主優待に魅かれてその企業の株を購入する場合でも、その企業の業績や今後の動向についてしっかりと分析しておくことが重要となります。