■注目が集まっている株主優待
近年、株主優待への注目が高まりつつあります。
株主優待を導入している企業数はここ15年間でほぼ一貫して増え続けており、その数は2000年では約500社ほどだったのですが、2016年の3月末の時点では約1300社と上場企業の3分の1にまで達するまで増えているのです。
では、なぜ株主優待という制度を導入している企業が増え続けているのでしょうか。
また、そもそも株主優待とはいったいどんなものなのでしょうか。
今回はその2つについて分かりやすく説明します。
■株主優待とは
株主優待とは、企業が一定数以上の株式を保有している自社の株主に対して配当とは別に年に1回か2回ほど物品やサービスを提供するものを指します。
「一定数以上」とは言っても100株以上購入すれば優待を受けることができる企業も多くあり、10万円以下の投資金額で株主優待を受けられる企業数も300社を超えています。
そのため、気軽に株主優待に注目をした投資を始めることができます。
■株主優待では何がもらえるのか
株主優待でもらうことのできる物品やサービスにはどんなものがあるのでしょうか。
企業によってその内容は異なっていますが、株主優待の内容は3つに分けることができます。
一つ目は、品物や商品券・割引券といった具体的な物を提供する場合で、最も一般的な株主優待はこのケースです。
特にこの株主優待を始めたのが食品会社であったこともあり、食品を株主優待にしている企業が多いです。
例えば、ビールメーカーであればソフトドリンクやワインの詰め合わせなどを株主優待としてもらうことができます。
また割引券として人気なのが、航空会社の株主優待です。
ANAやJALの株主優待は国内路線であれば航空券が50%引きになる株主優待チケットをもらうことができます。
値引き額が大きいというだけでなく、金券ショップなどに持ち込んで換金することもできるため、人気となっています。
二つ目は、株主に具体的な物ではなく、体験を提供する場合です。
普段は関係者以外が入ることのできない工場への見学や、イベントへの招待を受けられるという株主優待もあります。
こうした体験の提供は、その企業のファンだけでなく、子どもへの社会見学をさせるといった理由から家族をもっている投資家に人気なようです。
最後の三つ目は、株主優待の代わりに寄付を行うという制度を提供する場合です。
株主優待か社会福祉法人などへの寄付を行うといように株主が自分の社会的な関心度に応じて選択できるようにしている企業もあります。
このように、株主優待の機会を利用して、社会貢献をすることができます。
このように、株主優待を導入している企業の株を購入すれば、株価の値上がりや配当以外でも株を購入することによる恩恵を投資家は受け取ることができるのです。
■企業はなぜ株主優待を行うのか
企業はなぜ株主優待を行うのでしょうか。
株主優待を導入している企業がまだ上場企業の3分の1程度であることから分かるように、株主優待の制度を導入することは企業にとって義務ではありません。
それでも、株主優待の分を配当に上乗せするのではなく、わざわざ自社商品を提供したり、工場の見学会を開くという手間をかけて株主に優待を提供するのはなぜなのでしょうか。
それは安定した個人株主を獲得するためです。
株主優待に興味をもってその企業の株を購入する投資家は、必ずしも株価の値上がり益(キャピタルゲイン)のみを追い求めているわけではありません。
そのため、株価が変動したとしても株を売却しにくいと言われています。
この安定株主が多ければ、業績が悪化した際に株を売る人が減ったりするので、株価の変動が抑えられ、企業側も安定して市場から資金調達をしやすくなります。
ただし、このような合理的な理由から株主優待という制度が始まったのではなく、お歳暮やお中元といった日本の風習が影響しているというファイナンスの研究者もいます。
実は株主優待という制度は海外ではほとんど見られず、日本独自の文化なのです。
そのため、研究者の中にはもともとは食品会社から投資家に向けたお歳暮やお中元の意味合いだったのが、株主に喜ばれることで、次第に他業種にも広まっていったという説明をする人もいるようです。
■株主優待に興味を持った方へ
このように、株主優待とは、企業が安定株主を獲得して、株式市場から安定的に資金を調達するため、株主に対して提供される自社製品やサービス、イベントへの招待といった贈り物だと言えます。
せっかく株式投資を行うのであれば、こうした株主優待をもらえる企業に投資をしたいと思う個人投資家の方は多いのではないでしょうか。
そこで、この記事以外では株主優待をもらうまでの流れや、株主優待のメリットとデメリット、お得な株主優待を探す時のコツについても紹介しているので、興味をもたれた方はぜひそちらのページも参考にしてみてください。