知ったらしまい

■投資を新聞や雑誌の情報に頼っていては遅すぎる?

さて、このコラムを読んでくださっている投資家の皆さんは、投資の判断材料はどこから手に入れているでしょうか。多くの方は新聞や雑誌、四季報といった公開情報をもとに投資を行っているのではないでしょうか。

しかし、「そのような公開情報をそのまま投資に活かしてはいては投資で利益を生み出すことはできない」と言っている格言を今回は紹介しましょう。

■「知ったらしまい」

その格言とは、「知ったらしまい」という格言です。

これはある銘柄にとって好材料であっても、悪材料であってもそれが正式に公開されれば、多くの投資家がその情報をもとに即座に売買を行い、株価に反映され、材料出尽くしとなるため、いったん手仕舞うのが良い、という教えです。別の言い方をすれば、事実を知ってから買うのでは遅いということになります。

例えば、「ある企業が画期的な新製品を発売しそうだ」という噂が流れ始めると、その期待から株が買われ、株価が上昇していきますが、実際に新製品が発表されると、投資家からすれば何のサプライズでもなくなり、もはや株価を動かす力にはならなくなってしまいます。

つまり、「新製品が発売された」という事実を見てから投資を行おうとしても既に遅いのです。このように、なんらかの情報が事実として公に出回ってしまうと、もはやその情報をもとに投資を行ったとしても、そこから利益を生み出すことは非常に難しくなります。

したがって、新聞や雑誌などで「事実」として報じられた情報は投資に活かすには鮮度が悪過ぎる情報となっていると言えるでしょう。

■では、どうすればよいのか?

では、新聞や雑誌で「事実」として報じられた情報をもとに投資をしてはいけないとすれば、一般の投資家は何をもとに投資を行えばよいのでしょうか。

一つは、「うわさ」をもとに投資を行うという方法です。「事実」として報じられた情報はすぐに相場に反映されてしまうため、投資に用いるのは得策とはいえません。しかしながら、「うわさ」レベルの段階の情報であれば、その噂を信じていない人や、信じてはいるけれどもしデマだった時のことを考えるとそのうわさを元に投資をするのは怖いなあと躊躇している投資家がいます。

こうした人たちがいる限り、まだその「うわさ」は相場に十分に反映されてはいません。その結果、他の投資家を出し抜くことができ、利益を得られる可能性が十分にあります。

しかし、やはりここで注意しないといけないのは、「うわさ」を見極める目が必要になるということです。

世の中に出回っている「うわさ」の中に、出まかせの噂もあれば、将来確定事項として発表される有益な噂もあります。こうした玉石混交のうわさの中から事実となりそうなうわさを見極めて投資を行わなければ、単に嘘の情報に惑わされて投資を行ってしまうことになってしまいます。

このように、「うわさ」で買って「事実」で売るという投資手法は有効ではありますが、この手法を用いる場合にはその真偽を見極める必要があります。

もう一つは、「事実」として報じられた情報をもとに、他の人が考えない先のことまで思考を巡らせるという方法もあります。例えば、「ドル円のレートが円安に大きく振れた」という情報が「事実」として報じられたとしましょう。この「円安に振れた」という情報が最も直接的な影響をもたらすのは、輸出産業でしょう。

そのため、輸出産業の株価が即座に上昇することになります。しかし、この「円安に振れた」という情報の影響は本当にそこまででしょうか?よくよく考えてみれば、輸出産業が儲かれば、その輸出産業に部品を売っている部品業界の業績もそのうち伸びてくるはずです。

そして、その部品業界の業績が伸びれば、その部品業界に材料を売っている、いわば部品の部品業界の業績も伸びてくるはずです。こうした「部品業界」や「部品の部品業界」の株価は「円安に振れた」という情報だけではすぐには動かず、決算予想や決算発表によって株価が上昇していくことになります。

「円安に振れた」という「事実」をもとにその波及効果をしっかりと見極め、他の投資家が気づかないうちに、部品業界への投資を行うことで、利益を出せる可能性は十分にあります。このように、新聞や雑誌で報じられた内容をそのまま理解するのではなく、その報じられた内容に書かれていない波及効果までもしっかりと考えていくことで、他の投資家を出し抜くことができるのです。

■とにかく他の投資家の一歩先を

投資で利益を出すためには、他の投資家よりも先に値上がりする銘柄を購入し、他の投資家よりも先に値下がりする銘柄を売却する必要があります。「知ったらしまい」という格言にあるように、公表された「事実」にはそれ自体には価値がありません。

価値ある情報とは、「うわさ」段階の情報や、「事実」から他の投資家が考えに至っていない波及効果まで思いを巡らせた「推論」です。こうした情報をもとに投資を行い、それが事実として公表されたら手仕舞うということが投資では重要となります。

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